2016.04.01
河野知事 | 「地元日南で頑張っている企業があると、 多くの皆さんにしっかり知ってほしいと思います」 |
---|
橋本社長 | 「宮崎に来て、我々の使命というのは、地域に貢献する ことだと思うので、雇用維持や雇用拡大していくことが 最重要課題と思っています」 |
---|
※宮崎県の「知事が訪問!立地企業の魅力発信事業」とは、県が認定した立地企業の認知度アップや人材確保が図られるよう、 知事自らが立地企業を訪問して企業の魅力発信を支援する取組です。 |
対談に先立ち、会社概要説明と工場見学を行いました。 |
---|
河野知事 | 本日はお忙しいところ、ありがとうございます。 この事業にも応募いただいてありがたいと思っています。 宮崎県内で頑張っておられるすばらしい企業をもっともっと いろいろな方に知っていただきたいという想いでこの訪問事業に取り組んでいます。 是非ニチワさんの魅力を教えていただければと思います。 |
---|
河野知事 | 工場を見学させていただき、ありがとうございます。 最先端の設備が並んで、品質管理にも大変注意を払って取り組んでおられるのがよくわかりました。 素晴らしい製品をつくっておられるなあというのを実感しました。 |
---|
橋本社長 | 先日は「みやざき企業立地セミナーin名古屋」で弊社常務がお話の機会をいただきありがとうございました。 その資料を準備する際に私共のあらためて会社の歴史を振り返り、昔の写真などを見直し、勉強する良いきっかけ になりました。 |
---|
河野知事 | こちらこそ、お忙しい中、ご協力ありがとうございました。あれだけ広い工場ですが、 働かれている方はそんなに多いわけではないのですね。でもその中でも高い技能を持って 設備にも勝る技術を持った方がいらっしゃるのは本当にすごいですね。 |
---|
橋本社長 | 元々装置産業ですので、普通の生産に関してはほとんど自動化されています。 でも、元の金型をつくる工程などはだいぶ設備の精度が上がってきていますが、 人に頼ることが必要な部分もあります。 |
---|
河野知事 | 昭和49年に誘致企業ということで日南に立地していただいたわけですが、 その時の経緯からお話をいただけますか? |
---|
橋本社長 | 弊社は私の父が昭和37年に大阪で起業し、事業をやっていきながら、 「もっと会社を大きくしていきたい」イコール「工場の拡大」を考えた中で、 大阪の地での敷地確保が難しいということもあって、いろいろなところを探していたところ、 宮崎県の日南市との接点ができて、非常に快く良い条件で誘致のお話をいただいたことがきっかけになっています。 もちろん、当時、大阪からすると宮崎は遠いという部分があったのですが、 父の話では大阪だと周りの環境が既に出来上がっていたので、これからは逆にこのような都会と比べると 事業環境が厳しいところで生き残っていければ、もっと発展していくことができると考え、 あえて退路を断って厳しい環境でやっていこうとの覚悟で来たと聞いています。 |
---|
河野知事 | 当時から扱っておられる製品は自動車用の精密部品だったのですか? |
---|
橋本社長 | 当初は自動車用のナットをつくり、その後に先ほど見ていただいたような シートベルト用の部品やエンジンの部品などに少しずつ事業を拡げてきました。 |
---|
河野知事 | その点は非常に興味深いですが、当時からそのような部品を扱っておられて、 お客様の工場は大都市部に近いわけですよね。今では東九州道ができて北部九州の 自動車産業への事業展開などメリットもありますが、当時は交通事情の面でお客様と 離れてしまうことへの不安や課題などはなかったのですか? |
---|
橋本社長 | たぶん父も若かったので、その点はある程度創業者としての勢いがあったと思います。 私も二代目になって中国に進出した際にはお客様や材料の調達先との距離、 現地の雇用状況などをベンチマークし、お客様とも十分コミュニケーションを取って、 提案・相談しながら決めましたが、父が日南を選んだ当時は創業者の想いで チャレンジしたところに社員の皆さんがついてきてくれたということだと思います。 |
---|
河野知事 | 宮崎県としてありがたいのはそういう中でも素晴らしい仕事ができ、 会社もどんどん発展されたことですし、是非、他の企業の刺激になってほしいところです。 最近は「日本を支える元気なモノ作り中小企業300社」や「グッドカンパニー大賞優秀企業賞」 など様々な賞も受賞されていますが、どのようなところが評価されての受賞だったのでしょうか? |
---|
橋本社長 | 「元気なモノ作り中小企業300社」は宮崎県から、「グッドカンパニー大賞」は 九州経済産業局からご推薦をいただいたわけですが、長年継続的に事業を発展させ、 自動車部品の溶接ナットの国内シェア20%をいただくまでになったことが一番評価いただいていると思います。 中でもここまで成長できた源は、父がここに事業を持ってきたというエネルギーもありますが、 移ってきてから地域の皆様にご協力いただいた結果だと思いますし、そのような地域との繋がりも含めた トータルを評価されての受賞だと思います。 |
---|
河野知事 | 現在の設備や技術が確立してくる以前にはどのような強みを持っておられたのでしょうか? |
---|
橋本社長 | 元々ナットを作る設備はストロークの短い動きをするものですが、 お客様から様々な形状の製品依頼が出てきた際に専用の設備を購入するのではなく、 知恵を出して既存の設備を活用し、既存の設備でそれを実現していくということや、 金型自体も自社でつくる技術を蓄積してきた結果が現在の強みにつながっていると思います。 もちろん技術力も必要ですが、実際は現場社員のがんばりが一番大きく、 1分間に200から300個の製品がつくられる中で、品質の維持を厳しく求められる自動車産業において、 現場がスイッチを押すだけの仕事にならないようにすることが重要となっています。 |
---|
河野知事 | 寸法誤差や納期など様々だとは思いますが、品質の厳しさはどの程度のレベルを求められているのですか? |
---|
橋本社長 |
溶接ナットの場合、規格と合っていなければ、実際に溶接され使われる際に
ボルトとナットが噛み合わずその自動車自体がNGとなってしまうことから、
厳しい精度を求められます。寸法精度はおよそ0.05〜0.1ミリぐらいですので、
わずかに違っても規格外と判定されてしまいます。 したがって、社員や家族が乗る車を、製造に携わっている自分たちがつくっているという 意識を常に持って仕事に従事していることが重要だと思います。 基本は不良品をゼロにすることを目標にして、同業者との競争で切磋琢磨する中で、コスト だけでなく品質も評価されて、その結果が次の受注につながっています。 |
---|
河野知事 | 今、いろいろな産業分野で人手不足の状況にありますが、人材確保という面ではいかがですか? |
---|
橋本社長 | これまで雇用は比較的確保できていると考えていますが、直近は景気が良くなり、 都市部の大企業の採用が活発になっている影響で、将来の幹部候補となりえる大卒者の求人が 厳しくなってきていますので、その点が採用部門の今後の課題となっています。 |
---|
河野知事 | 少子化が進む一方、都市部では今仕事が増えて、いろいろな産業分野の人材が求められており、 地方から都市部に人口が流出しているわけですが、是非これだけ地元日南で、 宮崎でがんばっていただいている企業があるんだということを学生にもしっかり知ってほしいなと思います。 働く環境という面では子育て支援の表彰もさせていただきましたが、働く環境面での工夫についてお話をいただけますか? |
---|
橋本社長 | 子育て支援については、2014年に県の「子育て支援優良企業賞」を受賞しまし たが、それ以前から取組みを進めていて、2008年に「仕事と家庭の両立支援企業宣言」に取り組みましたし、 2009年にも県の「夢ふくらむ子育て顕彰」をいただいております。 直近では女性がパート社員から契約社員や正社員にステップアップできるしくみとして、 昇格の基準を明確にすることで、女性がこれまで以上に活躍できる場を設けたり、子育て世代の ニーズに応じて子供さんの急病や学校の行事などに対応できるよう年次有給休暇の時間単位での取得を促進しています。 その結果、女性だけでなく、男性の保育所送迎などへの有効活用が見られ、男性の子育てにも良い影響があったと感じています。 また、育児休業時の代替要員の引継ぎをスムーズにするために、基本的な作業は手順書の作成を行っています。 今後の目標として「※1くるみん」の取得へ向けて、一般事業主行動計画を策定し、来年の取得をめざしているところです。 |
---|
河野知事 | 会社としての業績や仕事のやりがいというものはもちろんですが、働く時の環境 や子育てを含めたサポート体制が充実しておられるのが非常に素晴らしいと思います。 |
---|
橋本社長 | ありがとうございます。 |
---|
※1 くるみんとは? 仕事と子育ての両立支援に関する自社の目標(一般事業主行動計画)を達成するとともに男性の育児休業取得など、 一定の要件を満たした企業が厚生労働大臣の認定を受け、次世代認定マーク(愛称:くるみん)を使用することができる制度です。 認定をうけると、自社の商品、求人広告などに「くるみん」を掲示し、子育てサポート企業であることを広くアピールできるほか、 税制の優遇を受けることができます。 |
河野知事 | さて、自動車用溶接ナットの国内シェアが20%と伺いましたが、裏を返せば、 高い技術での勝負や高い信頼性を求められる厳しい競争ということではないでしょうか? |
---|
橋本社長 | 技術もありますが、継続してお客様から品質賞などもいただいていることから、 様々な取組みを行ってきたことで、QCD(品質・コスト・納期)のトータルバランスが取れていることを 評価いただいているのではないかと思います。 |
---|
河野知事 | 高い技術や品質、信頼性で素晴らしい実績を築かれてきたわけですが、日南に来られて デリバリーというかオンタイムという点を高く保っておられる。製品の輸送はトラックになるんでしょうか? |
---|
橋本社長 | 今はそうですね。昔はフェリーなども使っていましたが、交通事情が良くなるにしたがって 九州道を使ったトラック輸送にシフトしています。 |
---|
河野知事 | 東九州道は使われないのでしょうか? |
---|
橋本社長 | 東九州道も日南まで工事が進んできていますので、もうすぐだと思いますが、 つながってもらえると活用の場が益々拡がってくると思います。 |
---|
河野知事 | 今後ともしっかりと国に要望をしていきます。取引先から離れた環境にありながらも、 これだけの業績を上げておられるのは素晴らしいと思いますし、宮崎県内の他の企業にも勇気を与えることになると思います。 |
---|
橋本社長 | 皆さんに少しでも勇気を与えられるようにがんばります。 |
---|
河野知事 | 今後さらなる拡張計画というのはありますか? |
---|
橋本社長 | 今のところはまだお客様から大きな受注がないので、既存の工場で何とかやりくりをしている状況です。 |
---|
河野知事 | 海外は中国などに拠点がおありですが、これからもいろいろと展開がありそうですか? |
---|
橋本社長 |
海外はまだ伸びしろが非常に大きいので、一昨年タイに「ニチワタイランド」を設立しました。
タイはまだ営業部隊だけなので、事務所の段階ですが、これから少しずつ受注を増やしていき、
ある程度の受注になったらタイで生産しようと考えています。 一方、中国は10年前に広東省佛山市に進出し、今年1月に湖北省武漢にも工場が完成しましたので、 これからお客様の成長に合わせて私たちも現地でやっていくことになります。 |
---|
河野知事 | 日本は人口減少ですが、中国は人口が増えてどんどん富裕になっていき、 ニーズはさらに高まっていくわけですけど、競争も激しい世界なんだろうなあと思います。 |
---|
橋本社長 | 私たちが海外に出ていくのは現地でつくって日本に持ってくるという考え方ではありません。 現地のお客様に納入する形で納期を考えると、そう簡単に全部の製品が対応できるわけではなく、 少しずつになりますので、日本からも製品だけでなく、金型を供給したり、応援が必要となってきます。 理想からいくと現地で100%まかなえるのが一番良いのですが、簡単にはいかないので、 拠点を増やすことによって、当然日本からのフォローなども必要になるため、 結果的に日本でも一定の仕事量を確保することにつながっていくという考えを持って海外に進出しています。 |
---|
河野知事 |
そういう意味でベースとなる日南本社が、技術という面でも人材育成という面でも益々重要になっているということですね。 最後にニチワの会社名の由来をお聞かせいただけますか? |
---|
橋本社長 |
元々は漢字で日本の「日」に平和の「和」で「日和」だったのですが、日南に進出当時にカタカナの「ニチワ」にしたんです。
先代曰く、「取引先の皆様、地域の皆様と日々平和に発展していきたい」ということで「日和」にしたと聞いています。 現時点ではお蔭様で大なり小なりそのような結果になっていますので、社名が良かったのかなあと思っています。 |
---|
河野知事 |
日南ですし、ぴったりの社名ではないかと思います。 本日はありがとうございました。自動車関連産業はものづくりを代表する産業ですし、 その重要な役割を果たしておられるわけですから、これから事業をどんどん拡大して、 雇用も増やしていっていただきたいなあと、日南を、また宮崎県を代表する企業として もっともっと発展していただけるのではないかと大変心強く思っています。 世界を含めて益々発展されることを祈っておりますし、県としてできる限りのサポートをさせていただきます。 また、子育て支援を含めて、モデル事業所として、これからもよろしくお願いいたします。 |
---|
橋本社長 | ありがとうございました。 |
---|